全固体電池とは?原理や特徴、市場や会社動向について解説。

「全固体電池」とは、正極と負極のイオンの伝導を"固体電解質"が担う一次電池または二次電池です。一次電池は既に心臓のペースメーカーとして実用化されております。二次電池はスマホや自動車用など現在開発段階です。

 

リチウムイオン電池の次世代電池として注目の全固体電池です。

 

本稿では、

「全固体電池とはどんな電池?」

「全固体電池の原理や特徴、市場や会社動向について教えて」

という疑問にお答え致します。

 

 

全固体電池の概要

 

「全固体電池」とは、正極と負極のイオンの伝導を"固体電解質"が担う一次電池または二次電池です。英語で「all solid state battery」と呼びます。

 

固体電解質は大きく、硫化物系と酸化物系に分かれており、硫化物系の方が成形性と導電性に優れておりますが、大気中で不安定といった安全性懸念があります。

 

固体電解質と聞くと難しいですが、茶碗や皿など同じセラミックスです。つまり、固くて耐熱性に優れた材料です。

 

用途は、一次電池としては、心臓のペースメーカーとして既に実用化されております。二次電池はスマホや自動車用など現在開発段階です。

 

2035年には2兆円超えの市場に成長するため、トヨタ、パナソニック、村田製作所、TDKなど非常に多くの会社で開発検討されており、競争が激化しています。

 

以下、全固体電池の特徴をまとめた表になります。

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用途

 

全固体電池の用途は、 スマートフォン、イヤホン、ゲームデジカメ、自動車、蓄電など多岐に及びます。二次電池はまだ検討段階です。近い将来全固体電池が実用化されると言われています。

 

一次電池はヨウ化リチウム電池として、既に心臓のペースメーカーとして実用化されております。心臓のペースメーカーに使用されるほど安全性と信頼性が高いです。この電池はイオン伝導性が悪く抵抗が非常に高いのですが、非常に少ない電流値(10uA(マイクロアンペア) )でも良いため問題なく使用できます。

 

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歴史

 

1960年代から全固体電池は酸化物系は、硫化物系は1980年代から開発が開始されました。しかし、電解液に比べてイオン伝導性が低い課題があり、技術開発があまり進まなかった。

 

2000年代以降に、東工大の菅野了次が電解液並みのイオン伝導性を持つ硫化物系固体電解質LGPSを開発したことや、固体電解質の界面制御方法の開発からブレイクスルーが起こりました。2035年にかけて一気に市場が拡大すると予想されています。

 

菅野了次氏が出した全固体電池の本です。全固体電池の唯一の解説本です。

全固体電池入門

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会社動向

 

2020年頃には、村田製作所、マクセル、日立造船は、製品出荷を目指しております。その他、TDK、FDK、トヨタ、日産、デンソー、日本ガイシ、日本特殊陶業、パナソニックなど非常に多くの会社で開発されており、かつ競争が激化しています。

 

村田製作所、マクセル、TDK、FDKはウェアラブルなどの小型電子機器向けへの適用を考えており、日立造船は宇宙用途への適用を考えております。

 

ウェアラブルなどの小型電子機器はエネルギー密度も小さく、電池自体も小さいのでより安全性が高く最初の製品導入として各社が参入しやすいのですね。

 

市場

 

2017年に21億円だった全固体電池の世界市場は、35年には2兆7877億円まで拡大する見通しです。IoT化や自動車の電動化を背景に伸びると予想されています。

 

構成

 

全固体電池の構成は以下のとおりです。正極、負極はあくまで一例です。全固体電池の基本構成は、固体電解質以外は、リチウムイオン電池の材料を適用できます。

 

  • 正極 コバルト酸リチウム(LiCoO2)など
  • 負極 リチウム(Li)、黒鉛(C)など
  • 電解液 固体電解質 (硫化物系、酸化物系)
  • セパレーター なし

 

全固体電池には、セパレーターがないことが特徴です。そのため、電池を薄くすることが可能になり、より高いエネルギー密度を実現できます。セパレーターの厚みは数十um程度ですが、エネルギー密度を下げる要因の一つになっています。

 

固体電解質が硬いため、活物質に金属リチウム(理論容量3860mAh/g)も使用し飛躍的なエネルギー密度の工場に繋げることが可能です。リチウムイオン電池では、充電時にリチウムデンドライトが発生し、セパレーターを突き破りショートに繋がっていました。しかし、固体電解質が硬いためその心配がありません。

 

全固体電池は、固体電解質を使用するため、液漏れの心配がないこともメリットです。液漏れが起こると有機溶媒が漏れて安全性が損なわれたりデバイスが壊れたりなどデメリットしかありません。 

 

有機溶媒とセパレーターを使用しないことが大きなメリットに繋がっています。

 

反応

 

全固体電池の反応は以下のとおりです。反応の一例ですが、リチウムイオン電池とほぼ同じです。

 

  • 負極 リチウムを含んだ黒鉛が、リチウムイオンと電子を放出します。
  • 正極 コバルト酸リチウムがリチウムイオンと電子を受け取ります。

 

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起電力

 

全固体電池の起電力は3.6~3.7Vです。リチウムイオン電池と同様に扱う正極・負極の活物質によって、 起電力が決定しますので、あくまで参考程度にしてください。

 

特徴

 

全固体電池の特徴は以下のとおりです。 

 

メリット

  • 高い安全性
  • 大容量
  • エネルギー密度が高い
  • メモリー効果がない
  • 強度が強い
  • 高温耐性
  • 液漏れがない

 

デメリット

  • 界面の抵抗が高い
  • 硫化物系は水と反応すると危険

 

課題 

 

安全性

安全性が高いと言われる固体電解質ですが、実はまだ安全性の懸念もあります。固体電解質の種類は、大きく分けて硫化物系と酸化物系があります。硫化物系の方が導電率も高く、成形性に優れています。しかし、硫化物系のものは空気中の水分と反応して、有毒な硫化水素を発生します。一方、酸化物系のものは空気と触れても安定ですが、導電性と成形性に難があります。

 

空気のない宇宙用途への適用を考えるのは理にかなっていますね。

 

界面抵抗

現在、活物質表面と固体電解質の界面制御が大きな課題になっております。固体電解質は、活物質表面と密接に接触していなければなりません。理由は、イオンを受け渡す固体電解質と活物質表面の接着が不十分であると、この界面の抵抗が非常に高くなり、イオン導電性が悪くなるためです。この界面抵抗をいかに減らせるかがポイントになります。

 

全固体リチウム電池の開発動向と応用展望 (エレクトロニクスシリーズ)

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  • 作者:辰巳砂 昌弘
  • 出版社/メーカー: シーエムシー出版
  • 発売日: 2019/06/28
  • メディア: 単行本